最近の出来事を元に脚本を書いてみる。その5
はじめに
この話はいい感じにフィクションです。
登場人物
わたし(26)…会社員
ボーカル(20代後半)
ギター(20代後半)
M
時刻は22時を回ったところ。
吉祥寺サンロードは、まるで一方通行になってしまったみたいだ。
人々はみんな、駅の方へ向かって歩いている。
SE
カッティングで弾かれているアコースティックギター
M
ふとギターとすごくいい声が聞こえてきた。
ハスキーな男の声。
すこし路地に入ると、いた。20代後半くらいだろうか。
アフロの兄ちゃんが、朗々と声を張り上げてうたっていた。
M
足をとめると、兄ちゃんにウィンクされた。
そのまま曲が終わり、2,3人の観客からまばらな拍手がおくられる。
兄ちゃん「いい夜だねぇ!」
M
私は曖昧な笑顔を返した。
兄ちゃんがダンボールを出してくれる。そこに座る私。
ダンボール on 路上。ひんやりしている。
兄ちゃん「今日何してたの?」 私「吉祥寺で買い物を」 兄ちゃん「あ〜!俺と一緒だ!」
M
周りから「うそでしょ」とからかわれる兄ちゃん。
おちゃめな人だ。
私「バンド名なんていうんすか?」 兄ちゃん「村上製作所!」 私「村田製作所から来てるんですか?」 兄ちゃん「そーそー! まあ俺の方が先だけどね!!」
M
そういって豪快に笑う。つられて私も笑ってしまった。
??「おーい!」 兄ちゃん「おお!何してたん?」 ??「エフェクターをさ、買ってた」 兄ちゃん「あ、こいつうちのギター!」 私「どうも」 ギターの人「どもども」
M
ギターの人はおもむろにギターを取り出した。セッションするらしい。
M
深夜のサンロードに、
アコースティックギターと少しディストーションがかかったエレキギター。
朗々としたハスキーボイス。
確かに、良い夜かもしれない。
M
曲が終わった。先ほどまで楽しそうにうたっていた兄ちゃんが、
今度は深刻そうな顔をしている。
兄ちゃん「あのさ」 兄ちゃん「今、今言っていい?いいんかなー? このタイミングで言っていいんかなー?」 ギターの人「なんだよ、早く言えよ」 兄ちゃん「……マサちゃん転勤だって。。。」 ギターの人「。。。えぇーーーー!」
M
サンロードに困惑した声が響き渡った。
ギターの人「ドラムいないとキツイよな。。。」 兄ちゃん「……探さないとな。。。」
M
ちょっと笑ってしまった。
僕は学生時代にバンドでドラムをやっていたからだ。
この状況、あの展開に似ている。
とつぜんメンバーの一人が負傷してギターが弾けなくなり、
途方に暮れるメンバーの前にあらわれる主人公。
普段はうだつのあがらない主人公が、そのときだけスターになる。
私「さっきの曲、途中で拍子が変わっておしゃれでしたね」 兄ちゃん「いや~!もうあそこ二度とやんない! 難しいんだよね!」
M
兄ちゃんはあれ、と首をかしげた
兄ちゃん「……ちょっとまって。君音楽やってたっしょ」 私「……昔ちょっとやってました」 兄ちゃん「やっぱそうだよな!あそこ普通の人はわかんねえもん」
M
ここで「ドラムやってました」といったらどうなるんだろう。
私「……じゃあ、私はそろそろ」 兄ちゃん「お。帰る?」
M
手をぶんぶん振る兄ちゃんと、ギターの人。
兄ちゃん「いい夢見ろよ!」 ギターの人「またね〜!」
M
僕はそのまま帰宅した。