君は心理学者なのか?

大学時代に心理学を専攻しなぜかプログラマになった、サイコ(心理学)プログラマかろてんの雑記。

iphoneを探していたはずなのに、いつしか私は死に場所を探していた。

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※ 学生の頃の話です

その1

眩しい。どこかで蛍光灯が光っている。

背中にはぺらぺらの布団と、硬い床の感覚。

目を開いた。見覚えのある部屋。

どうやら無事に家に帰ってきたらしい。

その2

眼鏡を探す。ない。

スマホを探す。これもない。

目がさめると、私の生活インフラの大部分を失っていた。

その3

「彼らを取り戻さなくては」そう思った。

残念ながらこのような展開には慣れていた。

酒をのんで記憶を飛ばし、現場に何かしらの置き土産をするのは割りとよくある話だ。

少なくとも私には。

これだけ簡単に記憶が飛ぶのだから、人間の記憶なんてもろいもんだなーと思う。

メモリだったら揮発性。どうせ大した記憶じゃないから別に揮発していいんだけれど。

その4

Macを広げ、「iphoneを探す」

画面上にiphoneの現在位置が表示される。

その5

指し示された位置は、入ったことのない森だった。

その6

うそでしょ。そう思う。

昨日は鴨川で楽しくお花見をしていた。

なんでこんな「河原から小一時間ほど歩いた森の中」にiphoneが。

でも確かに森の中だった。

周りには目印がなにもなく、あるのは等高線。

丁度緩やかな谷になっているところに、たしかにiphoneが存在している。

少なくともGPS上ではそうなっていた。

その7

多分位置情報がずれてるんだ。とにかく現場に行こう。

そしたら近くの公道にiphoneが落ちているはずだ。

そう思った私は、Macを持って現場に向かった。

その8

現場近くでMacを広げる。

iphoneには緊急モードというものが搭載されていて、

それをMacから遠隔で起動することができる。

起動すると、

画面ロックしたり、

iphoneの画面上に連絡先電話番号を表示したり、

……iphoneに断末魔の叫びを上げさせることができる。

それはただの甲高い発信音。でも聞くたびに「これ断末魔だよなぁ」と感じる。

その9

森の近くの公道にて、その時は来た。

Mac画面上のボタンを押した。

iphoneが叫んだ。

…その断末魔は、森の方から聞こえた。

声のする方へ、少しづつ足をすすめる。

足元が悪い。どうしてこんなところに昨日の私は存在していたのか。

どう考えても死にたかったとしか思えない。

無意識に死にたかったとしか、思えないのだ。

その10

断末魔が近くなる。

更に悪くなる足場。

鳴り続ける断末魔。

ついに……見つけた。

その11

iphoneと。その横に眼鏡が見つかった。

まるで昨日の私は、上空からUFOに吸い上げられ、

眼鏡とiphoneをその場に置き忘れてしまったようだ。

異様な光景がそこにあった。

その12

昨日そこで何があったのか、いろいろな人の証言を確認した。

わかったのは、

「河原で呑んでいたお前すごいニコニコしてた」

「でも突然フラフラと何処かに歩きだした」

という2点だけ。

その13

僕は考えるのをやめた。

酒もしばらくやめた。

その14

3日後に日本酒を呑んだ。美味しかった。