君は心理学者なのか?

大学時代に心理学を専攻しなぜかプログラマになった、サイコ(心理学)プログラマかろてんの雑記。

予備校は牢獄だった〜浪人時代予備校にいた「7浪さん」の話〜

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僕は大学に入るまで、3年かかった

3年。長かった。

受験勉強を始めたのが高3の夏。

それなりに勉強をしたのだが結局志望校には入れなかった。

結局僕が入ったのは予備校。そこで1年、そして2年といた。

よく「浪人時代は本当に苦しかった」と言っている人がいて、

「1浪でもつらい、2浪なんて頭がおかしくなる」なんて感想をくれたりするが、

僕は予備校生活が楽しかった。

そう。予備校には本当に色んな人がいた。アメリカもびっくりの人種のサラダボウルだ。

聞こえが良いが、悪くいうとただの魔窟だった。

七浪さん

僕が通っていた予備校には「リフレッシュルーム」と呼ばれているところがあり、

自販機があって、4人座れるでかい丸テーブルがいくつもあって、謎のカウンターがあった。

そこは予備校生が唯一くつろげるオアシス的場所だった。

毎日、大量の英単語・数式・いつ使うかわからない物理法則・その他諸々を詰め込みまくって、

脳が消化不良を起こしてゲロを吐いている、そんな生活を送っているのだ。

死刑囚だって最後はタバコを吸わせてもらえる、

だから予備校生だってリフレッシュしたっていいはずだ。

そんなリフレッシュルームの雰囲気を完全に破壊していたのが

「七浪さん」だった。

七浪さんとその取り巻き

坊主。目にはサングラス。壁を蹴ったら突き刺さりそうなほど先が尖っている靴。

手首には高そうな時計。そして意外に低い身長。

彼はいつも肩を怒らせて歩いているので謎にデカく見えた。

彼の朝は遅い。少し日が傾き始めた15時頃、リフレッシュルームに現れる。

七浪「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜す

取り巻き達「お勤めご苦労さまッス!!

ここは獄中か?

獄中ヒエラルキー

脱獄モノ映画でみたことある。

長くいるやつほど偉いという獄中ヒエラルキーが、そこに存在していた。

僕は気づいてしまった。

予備校は入学ではない。投獄なのだ。

彼はもう7年も勤めている。懲役何年かしらないがきっともうシャバには戻れないだろう。

3浪や4浪はまだ社会復帰できる可能性が残っている。

僕みたいな1浪はお話にならない。まだ社会に片足を突っ込んでいるただの軽犯罪者だ。

もちろん、素行が悪ければ刑期はもっと伸びる可能性がある。ここではそういうルールなのだ。

彼は勝ち組だった

そんな彼は、リフレッシュルームでいつもポーカーをやっていた。

また彼は既婚だった。子供もいた。

そしてレクサスに乗ってた。

資金はどこから出てるんだと思ったが、親が金持ちらしい。

…酒、女、ギャンブル。

これらすべてが満ち満ちた医学部受験生が、確かに僕の身近に存在していた。

彼はいわゆる「勝ち組」だった。

七浪さんは消えた

七浪さんはセンター試験に近づくに連れ見かけなくなった。

きっと、レクサスを乗り回しているのだろう。

そして時が流れた

センター試験を命からがらこえて、二次試験で頭が真っ白になり、

3点の差で入学を逃した僕はめでたく2浪目に突入した。

授業が終わり、僕はリフレッシュルームにいった。

新入りはどんな面構えをしているのか見るために

長い予備校生活で、僕も完全な「投獄ヒエラルキー」の一員になってしまっていたのだ。

フレッシュな面構えを見ながら、

「生きの良いのが入ってきた…俺達のシゴキにどれだけ耐えられるか見ものだな」

なんてうそぶいていると、全然フレッシュじゃないやつがいた。

そいつは、もちろん坊主だった

命名変更

八浪さんだった。

……こうして彼の名前はincrementされていく。

今もどこかで、静かにincrementされているのかもしれない。